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2019/03/14 17:11


冷蔵庫を開けるたびに挨拶をしてしまう。


冷蔵庫の指定席に座っている木製バターディッシュ。


御用のある時には Hi ! と声をかけるし、御用のない時にもSee you と言いたくなる。


初めて冷蔵庫に収めた時には、なんだか寒そうに見えてちょっと心配になったけれど。


なんのなんの、冷蔵室の気温にはびくともしない。


頼りになる奴だ。



樹齢百年を超えるホワイトオークという木が


樽となり、長い間洋酒を抱いて寝かされてきた。


その役目を終えた樽材が、


誠実な木工家の丁寧な仕事で、


第二の人生をバターを抱いて生きることになった。



我が家で使っているものは2種類。


13年前に作られた、初代バターディッシュ・レギュラーサイズ200g 用と


新たに仲間入りした、ポンドサイズ450g 用。


二つを並べて置いてみると、


初代のレギュラーサイズバターディッシュは、


13年間バターの油分が染み込んで艶々としている。


年数と共に風格も出てきて


今や冷蔵庫のボス的存在だ。


バターを使い終えた時、容器に残ったバターを


キッチンペパーですり込むだけのお掃除で、


特別なお手入れなしでも、木は潤ってくる。



木工家 清水久勝が制作するバター保存容器は、


バターを薄く削るだけでなく、


器がまな板にもなり、


塊をカットしやすい。


しかも、木製ナイフもケースの中に収まってしまう。



ぴったりと密閉された木の箱は、


バターを外気温から守ってくれる。


かちんこちんにならないし、


冷蔵庫から出しておいてもすぐにトロリと溶けたりしない


木の特質が活かされた容器だ。



上蓋は10mmに削られた樽材が


仕口という木工技術で組み立てられ、


ブビンガの樹のチギリでしっかりと止められている。


底板は一枚板で、ナイフ置きが削り込まれている。




左利きの方も使いやすいようにと、ナイフは両刃カット。


左利きの息子のお陰で生まれた発想だ。




ところで、ナイフ置きの両端の丸い穴は?


右置き左置きどちらの方向でも


ナイフの丸いお尻がぴったりと収まるように


とのことだが、


使ってみると、これが意外と便利。




仕上げのオイルは、口にしても安全な


国産のくるみオイルなので、


安心して裸のバターをのせられる。


2019年春、制作されている木製バターケースは


レギュラーサイズ200g用が3代目バージョン。


ポンドサイズ450g用は新登場でこれが初代となる。




底板は、両サイズともに


指がかかるように緩やかなカーブがつけてある。




銀紙をベリベリッとはがして


バターを木の箱に納めた姿は美しい。


バターが輝いて見える。




バターたっぷりで焼いたフレンチトーストもいいけれど、


 熱々の炊きたてご飯に、


削ったバターをのせて、醤油をたらり。


バター醤油ご飯は、時々無性に食べたくなる。


愛すべきバターと、愛すべきバターディッシュ。


どちらも美しい。



美しいものは美味しいし、


美味しいものは美しい。


木製のバターディッシュは食べられないけれど、


大好きなバターを美味しいままに、


保存してくれる美しい奴だ。


( textile artist  清水まゆみ )